展示物をめぐる物語『展覧会をつくる』を読んで

先日、上野の森美術館の「怖い絵」展の内覧会に参加した際、中野京子さんが担当者が方がすごく頑張ってくれて目玉作品である「レディ・ジェーン・グレイの処刑」の貸し出しが許可されたというお話しがありましたた。

そこで気になったのが、私たちがこうした展覧会で目にする作品はどのようにくるのかということ。その一端を垣間見ることのできる書籍が、足澤るり子さんの『展覧会をつくる』(柏書房)です。

足澤さんは、当時パリ在住でフリーランスのアートコーディネーター。日本で行われるさまざまな海外展の実現のために、学芸員のコンセプトを理解し、その意見を尊重しながらフランス語に翻訳したり、展示に必要な借用書の作成をしたり、日本の企画関係者がパリに出張する際にはアポイントメントの調整や交渉の通訳を行ったりしています。

一つの芸術作品を国外へ持ち出すには、多くのリスクが伴う。移動に伴う破損の危険性や保存状態による劣化、盗難の可能性……。こうしたリスクがあるものの、どうにか作品を貸し出してもらうために尽力するのだとか。

また、最初のコンセプトで作品のリストをつくるけれど、それはあくまで”ドリームリスト”。希望通りには借りることができないことがほとんどで、借用を断られたときからどうそれに近づけていくかが力量が問われます。

作品が借りれるのかという不安や、交渉による苦労はつきもの。それでも展覧会の開催に向けて奔走する。足澤さんは次の言葉を綴っています。

展覧会とは、まず本物を発見し、これと対話する場所だったのだ。本物の作品に対する自分の興味が進んでゆくと、その作品を描いた作者や時代が知りたくなる。その時、それらを展覧会で立体感に見せてくれれば、興味はさらに増す。だから展覧会のコンセプトは絶対的に重要なのだ。

自分がこの仕事を続けてゆく意味が、その時全身に戦慄となって走った。わたしは、子どもたちが、「本物」を見るための展覧会をするために、そして親たちが子どもと共にそれを見学できる機会を提供するために、この仕事を続けてゆきたい。

こうした裏方で活躍する人がいるから、私たちは展覧会で本物の作品を目にすることができる。なんと貴重な機会なのかと驚かされます。

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