「シャガール 三次元の世界」東京ステーションギャラリー

私はシャガールといえば、絵画作品があることしか知らず、しかも男女が空を飛んでいて不思議だなぁという印象しかありませんでした。

今回の展覧会では彫刻や陶芸といったシャガールの立体作品を本格的に紹介。絵画70点、彫刻50点、陶芸10点の計170点の作品に触れることができます。

シャガール

中に入って一番最初に目にするのは、展覧会のイメージにもなっている「誕生日」という作品。これはシャガールの誕生日(7/7)に、妻のベラが花束を持って彼の部屋を訪れた様子を描いたもの。シャガールのそのときの喜びを表現するためか、彼はふわふわと宙を浮いてベラにキスをしています。

絵画が発表されたのは1923年。そこから時を経て、1964年に「ふたつの頭部と手」、1968年頃には「誕生日」のタイトルで、今度は大理石の彫刻で同場面を表現しています。

私が驚いたのは展覧会のイメージにも使われている「ふたつの頭部と手」。人の顔を上下に配置して彫刻でふたつの顔を表現するような手法? は初めて見たので、こういう表現方法もあるんだなぁと、いきなりシャガールに心をつかまれました。

同じ場面を絵画と彫刻で表現することに、シャガールにとって月日が流れてもそのときの喜びは大きなものだったのかなぁと感じました。ふたりはこの約2週間後に結婚したのだとか。

次の部屋に移ると、陶芸作品が展示されています。シャガールは1949年に陶器づくりに取り組んで、そのときは平皿に絵付けをした絵画の延長でした。1951年に壺の制作をしてから、多くの立体作品が生み出されたのだとか。そして、彫刻制作へとつながります。

ここで興味を惹かれたのは、陶芸が用途にしばられることなく、シャガールがイメージしたものを自由自在に生み出していること。陶芸には下絵があるのですが、二次元である絵の世界観と、三次元である陶芸のフォルムが寄り添うように表現されています。

彫刻も同様で、下絵と彫刻を見比べると、シャガールがイメージしたものが立体的になる過程も伺えて、表現の幅広さに圧倒されます。

そして、今回の展示で初めて知ったのですが、シャガールの作品はその多くが宗教的な主題によっています。

実は運良く中野京子さんの『名画の謎』を読んでいたのですが、そこで解説されていた作品に着想を得た作品が多く展示されていました。

たとえば、「ヤコブの梯子」や「キリストの磔刑」など。私が特に印象に残ったのは、新約聖書の「エジプトへの逃避」の図象を援用していた作品NO.126「雄鶏」です。「エジプトへの逃避」ではロバに乗った聖母マリアがイエスを抱いているのですが、「雄鶏」では乗り物がロバから雄鶏となり、それには男女が乗っていて、女性の胸には小さな子どもがいます。これは恋人あるいは親子を結びつける普遍的な愛の物語を紡いでいるということで、聖書のいち場面を利用した表現に彼の宗教的思想を垣間見ることができました。

昨日の「怖い絵」展でもらったプレスリリースの中に、中野京子さんのこんな言葉がありました。

絵画、とりわけ19世紀以前の絵は、「見て感じる」より「読む」のが先だと思われます。一枚の絵には、その時代特有の常識や文化、長い歴史が絡み、注文主の思惑や画家の計算、さらには意図的に隠されたシンボルに満ち満ちています。現代の眼や感性だけではどうにもならない部分が多すぎるのです。
出典:「怖い絵」展プレスリリース

勉強とまでは言わなくても、今日のシャガールの作品はモチーフになった旧約聖書や新約聖書の内容を少しでも知っていたことで、よりシャガールの世界観に浸れることのできた作品鑑賞の時間でした。

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